碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

いつになく強気なライアンに怯んだかのように、アデルは聞き返した。
ライアンは、フレイア王国の王太子が惚れ込んだ、妹の美しいエメラルド色の瞳を見つめながら、ふっと口角を上げて微笑む。


「とは言え、その狂おしい恋の相手は俺の妹だからな。兄としてお前の気持ちも尊重したい。アデル。確かにお前の気持ちもわかる。セディがまったくお前に気付かなかったのは、親友としてもフォローのしようがなかった。だから決して、セディだけの手助けをするつもりはない」

「だから、何?」

「アデル。もう一度だけでいい。あの姿でセディに会ってやってくれないか?」


ライアンは勇者のような力強い光を瞳に宿し、アデルにサラッと簡単に言いのけた。
アデルは黙ったまま何度もパチパチと瞬きをして、ただ一言、「え?」と聞き返す。


「いや、だから。もう一度ドレスで着飾って、セディと逢瀬を……」

「絶対! 嫌!!」


アデルは真っ赤な顔をして、ライアンが繰り返した提案を剣もほろろに突っ撥ねた。
予想通りのアデルの反応に、ライアンは額に手を遣りながら、はあっと声に出して溜め息をつく。


「アデル……」

「それのどこが、私の気持ちを尊重してるって言うの!?」