碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

それが伝わったのか、アデルはビクッと身を竦ませる。


「セディが……どうかした?」


アデルが聞き返す声には、ライアンにもわかりやすいほど戸惑いが滲んでいる。
彼女は落ち着かない様子で、手の上で両手を組み合わせたり解いたりしていた。


それを見て、ライアンは思い出す。
セドリックが、わざわざアデルを探しに武器庫に姿を現したのは数日前だ。


あの時、彼は最初からどこか様子がおかしかったが、集中力を欠いたままアデルと剣を交わして負けた。
一国の王太子であるセドリックをあんなにも乱していたのは、アデルへの恋心だ。


残念ながら、アデルはそれを自分に向けられたものと、絶対認める気はないだろうが……。
それでも、彼女も彼女なりに感じるところはあるのだろう。
少なくとも、放っておけないとは思う気持ちは同じだろうと信じて、ライアンはそこに勇気を借りる。


「アデル、俺さ。正直なところ……あのパーティーでお前に仮面を着けさせたこと、後悔してたんだ」


あのパーティーが始まったばかりの時、広間で会ったアデルとのやり取りを思い出しながら、ライアンは目を伏せて呟いた。
アデルも、ライアンのその言葉には、黙ったままほんのわずかに頷く。