碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「おいおい、セディ。それ、冗談でも父上の前では言わないでくれよ? 真に受けて本気でドレス着せて送り込んでくるぞ?」


セドリックの軽い冗談を聞き咎め、ライアンもさすがに苦笑する。
しかしセドリックは面白そうにニヤリと笑った。


「僕は別に、本当に構わないけど?」

「よしてくれ、セディ。アデルが王太子妃になんかなったら、アシュレー侯爵家にとっては安泰どころか波乱の種にしかならん。父上の髪が真っ白になってしまう」


ライアンとセドリックは口々にそう言い合うと、なんとも愉快そうに声をあげて笑った。
そして、散々からかわれた屈辱でプルプルと身体を震わせるアデルに背を向けると、城内に続く回廊へと戻っていく。


途中、セドリックが何か思い出したように、『あ』と言ってアデルを振り返った。
彼の涼し気な碧眼に真っすぐ射竦められて、アデルは思わず身体を強張らせてしまう。
しかし、セドリックはなんとも優雅に微笑んだ。


「アデル。今度久しぶりに、僕とお手合わせ願えるかな?」


一言そう言って、セドリックはアデルの返事を待たずに再び背を向ける。
彼のマントがふわっと翻り、ラベンダーの精油の香りがアデルの鼻先をくすぐった。


数歩先で待っていたライアンの隣に並び、セドリックは回廊の奥へと進んでいく。
アデルはその背が見えなくなるまで見送っていた。