碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「……すまない、ライアン」


セドリックの謝罪を聞きながら、ライアンは弾む呼吸を整え、少し乱れた衣類の胸元を軽く直した。
それでようやくホッとして、一度大きく息をついた。


「『仮面の姫君』……か?」


ライアンが声を低めて問いかけるのを聞いて、セドリックはグッと唇を噛む。
やるせない想いが胸にせり上がってきて、彼はライアンから大きく顔を背けた。
そんなセドリックに、ライアンは遠慮がちに畳みかける。


「今夜、国王陛下、戻られたんだったな。何か……あったのか?」


セドリックは黙って何度も首を横に振りながら、一歩ずつ後退してライアンから離れた。
自分に向けられるライアンの視線が痛くて、セドリックは逃げるように目を伏せる。


「……ライアンが……本当に知らないなら、いいんだ」

「セディ」

「乱暴な真似、すまない」


セドリックはそれだけ言うと、ライアンに背を向けた。
背中に刺さるライアンの視線を蹴散らすように、マントを翻す。
そのまま大股でライアンの部屋を横切った。


彼の部屋から出たセドリックは、何かを吹っ切るかのように一度大きく頭を振り、ゆっくりと顔を上げた。
そして大きく胸を張り、廊下を颯爽と歩き去っていった。