碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「っ……セディ!?」


ライアンが怯んだその隙を突いて、セドリックは更に彼に詰め寄る。
まるで鬣を逆立てた獅子のような、激しく獰猛なセドリックに、彼をよく知るライアンも大きく息をのむ。


「ど、どうしたんだ?」


長い付き合いのライアンでも、こんなに荒れて衝動的なセドリックを見たことがなかった。
不可解さよりも戸惑いが勝り、ライアンは受け身もままならない。


「っ、うっ……」


一度大きく揺さぶられ、ライアンは後頭部を壁に強打した。
ライアンの苦痛な呻きを聞いても、昂ぶったセドリックの感情は治まらない。


「言えよ、ライアン! これは命令だ!!」

「セ、セディ……?」

「君は知ってるんだろ? 彼女が誰か、どこにいるのか……!!」


追い詰められ、焦燥感に駆られたセドリックは、ライアンの首がガクガクと動くほど、強く揺さぶり続ける。


「セディ、待て……!」


ライアンはセドリックを止めようと、彼の手にかけた自分の手にギュッと力を込め、喉から声を振り絞った。
悲鳴のように響くライアンの声に、セドリックもハッと我に返る。


「す、すまない」


ライアンの胸ぐらから両手を離し、セドリックは一瞬自分の手をジッと見つめた。
そしてガックリと肩を落とし、ライアンの前でこうべを垂れる。