碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

国王の公務室を出たセドリックは、やり場のない苛立ちを必死に抑えながら、脇目も振らずに廊下を突き進み、階下に続く階段を一気に駆け下りた。


廊下やホールを行き交う使用人たちが廊下の端に身を寄せ、深々と頭を下げるのを横目に、彼は真っすぐ騎士団宿舎に向かう。


叙勲を受けた騎士の部屋は、宿舎でも奥まった一角にある。
その中の一室、ライアンの部屋のドアに、セドリックは勢いに任せて力いっぱい拳を打ちつけた。


「ライアン! ライアン! 僕だ」


ドアを叩きながら声を張り上げると、ゆっくりと内側からドアが開いた。


「な、なんだ? セディ」


ドア口に立ったライアンは、任務から引き上げてきたばかりなのか、まだ騎士の制服のままだ。
セドリックの剣幕に驚いて、ライアンは大きく目を丸くしている。


「どうした? 血相変えて……」

「答えろ、ライアン!」


セドリックはいきなりライアンの胸ぐらを掴み上げると、そのまま強引に室内に押し入った。


「えっ!? な、セディ!?」


セドリックの勢いのまま、後ろ向きの姿勢でグングン押されたライアンの足が縺れる。
後ろに大きく倒れそうになり、ライアンは慌ててセドリックの両手に手をかけた。
その途端、背中を壁に力任せに押さえつけられ、ライアンは思わずひっくり返った声をあげた。