それはやがて戦火に発展し、フレイアの美しい湖も緑の森も、業火に焼き尽くされる。
領土を、王国を、そして民の幸福を……セドリックの我儘な恋一つで、すべてを滅ぼすことになるのだ。
王族として、王太子として、もうこれ以上は、あの姫君を追うことはできない――。
強張った表情で小さな返事をしたセドリックに何度か頷きながら、国王はゆっくり立ち上がった。
「ニール」
国王が一際張り上げた声で呼ぶと、途端に外からドアが開かれる。
人払いはセドリックの手前だけで、ニールは外で待機していたのだろう。
ハッと振り向くセドリックを気にする様子もなく、ニールは姿勢良く執務机の前に進んでくる。
すぐ隣でピタリと足を止める彼の横顔を、セドリックはただジッと見つめた。
「一ヵ月後、もう一度セドリックの妃選びのパーティーを執り行う。招待客は少なくて構わない。むしろ規模を縮小して、パーティーからこれまでの間、候補者から選別していたように思わせるんだ」
「はい」
国王の命令に、ニールは表情も変えずに短い返事をした。
それを聞いて、セドリックはギリッと奥歯を噛み締める。
無意識に握り締めた手は、身体の脇で小刻みに震えていた。
領土を、王国を、そして民の幸福を……セドリックの我儘な恋一つで、すべてを滅ぼすことになるのだ。
王族として、王太子として、もうこれ以上は、あの姫君を追うことはできない――。
強張った表情で小さな返事をしたセドリックに何度か頷きながら、国王はゆっくり立ち上がった。
「ニール」
国王が一際張り上げた声で呼ぶと、途端に外からドアが開かれる。
人払いはセドリックの手前だけで、ニールは外で待機していたのだろう。
ハッと振り向くセドリックを気にする様子もなく、ニールは姿勢良く執務机の前に進んでくる。
すぐ隣でピタリと足を止める彼の横顔を、セドリックはただジッと見つめた。
「一ヵ月後、もう一度セドリックの妃選びのパーティーを執り行う。招待客は少なくて構わない。むしろ規模を縮小して、パーティーからこれまでの間、候補者から選別していたように思わせるんだ」
「はい」
国王の命令に、ニールは表情も変えずに短い返事をした。
それを聞いて、セドリックはギリッと奥歯を噛み締める。
無意識に握り締めた手は、身体の脇で小刻みに震えていた。
