碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

一緒に育った親友のライアンともその妹のアデルとも、ただの貴族とも自分は違う。
一国の中で唯一の存在である王太子。


ゆくゆくは国を治める国王となる身である為、二人の姉やニール、そして妹や弟とも違う、特別な教育を受けてきた。
そんなセドリックが、たとえ心の中とはいえ、『王太子の位などどうでもいい』と思うのはこれが初めてだった。


他国に派遣した遣いがあの姫君を見つけられないのならば、自分で心の赴くまま、各国を渡り歩いてでも、見つかるまで探したい。
見つけ出しさえすれば、王太子からの正式な求婚を、断れる姫君はいない。
セドリックは、恋焦がれる姫君を妃にすることができる。


しかし、王太子であるからこそ、彼自身が探し回ることは許されない。
セドリックは、現実のジレンマに苦しんでいた。


「……兄上に言われずとも、わかってるよ」


セドリックはニールから目を伏せ、素っ気なく言い捨てると、パシッと馬の腹を蹴った。


「はっ」


威勢よく声をあげ、セドリックはニールとの距離を離そうと速度を上げて馬を走らせた。
背後からは、『セディ』とニールの声が追ってくる。
しかし、セドリックはそれを振り払うように馬に鞭を打った。


苦しい。ただ苦しかった。
このまま城門を出て、一晩中森を駆け巡りたい衝動に駆られる。
しかし、国王に呼ばれている以上、行かないわけにはいかなかった。