「……姉上に笑われて、絶対違うって言い張ったんだけど……これが恋煩いってヤツなのか……?」

「……は?」


セドリックがボソッと呟いた聞き慣れない言葉に、アデルとライアンは目を瞬かせ、顔を見合わせた。
そんな二人の前で、セドリックは『くそっ』と短い声を漏らしながら、立てた片膝を抱え込み顔を隠してしまう。


「あのパーティーで招待状を送った近隣諸国全部に遣いを出して、彼女を探させたんだ。でも、見つからない。緑色の瞳の姫君は星の数ほどいても、あんな煌めくエメラルド色の瞳を持つ姫君はどこにもいなくて。……僕が自分で探しに行けるなら、それが地の果てでも飛んでいくのに」


くぐもった聞き取りにくい声で吐き出すように言うセドリックに、ライアンもアデルも息をのんで黙り込んだ。


「遣いが帰って来る度に気が急いて謁見するのに、『見つからない』って報告聞く度にガッカリして……こんな僕、姉上たちから見たら相当滑稽みたいだよ。『フレイアの魅惑の王太子も、恋の前では形無しね』って。……こんなんじゃいけない。僕は……いずれこの国を治める国王になるんだから、さ……」


俯いたまま、セドリックは声を消え入らせる。
彼を見下ろすアデルの胸が、きゅんと震えた。
疼いて抉られるように痛むのを堪え、彼女は自分の胸にぎゅっと握った拳を押さえつけた。