碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「あ……うん。その……や、屋敷に戻ったらね。お母様の話し相手に捕まって戻って来れなくなっちゃって……」


昨日アデルが休みだったことを、セドリックが知っていた。
アデルはそこから言い訳を考え、咄嗟にそう誤魔化した。


それを聞いてセドリックは、ただ『ふ~ん』と鼻を鳴らす。
その反応からでは、アデルの出まかせをセドリックが信じたのか、そうではないのか判断できない。


アデルはそおっとセドリックに顔を向けた。
窺うように、斜め下の角度から見上げる。


セドリックはアデルの上目遣いの視線を感じながら、はあっと声に出して溜め息をついた。
そして、大きな手で口元を隠しながら、「アデル」と名前を呼んでくる。


「それじゃあ、君は昨夜のパーティーのことは何も知らないんだよね?」

「え?」

「その……僕が一目惚れして、求婚した姫君のこと」


セドリックの口から告げられたその言葉に、アデルはギクッと身体を強張らせた。
しかしセドリックは彼女の反応を気にする余裕もないようで、上体を前に屈め、輝くブロンドの髪をクシャッと掻き回しながら大きな溜め息をついた。


「恥ずかしいけど、こんなの本当に初めてなんだ。ずっと仮面を着けていて、最後まで名前も聞けないままだった。結局どこの誰かも、顔すらわからない。なのにこんなに……僕は彼女に恋焦がれてるんだ」