碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「……ごめん、アデル。怒ってるようだから、謝りに来たんだ」


セドリックが座った場所で、寝台がギシッと軋んだ音を立てる。
彼は身を捩ってアデルを見下ろし、毛布の上から彼女の背をそっと撫でた。
アデルがピクッと身を震わせるのが、セドリックにも感じられる。


「アデル。顔を見せて」


セドリックはアデルの背を軽く叩きながら、続けてそう声をかけた。
毛布の中でそれを聞いていたアデルは、思わずギュッと目を閉じる。


それは、昨夜もセドリックに言われた言葉だ。
彼は昨夜、アデルに仮面を外してくれと願い、今は毛布から出て来いと言っている。


本当は、このまま諦めて部屋から出て行ってほしいと思っていた。
しかし、アデルも少しだけ冷静になる。


セドリックはまったく気付いていないのだから、彼にとって今朝のアデルの不機嫌はまったくもって意味不明だろう。
少なくともアデルには、セドリックがいつも通り意地悪をしながらも、本当は困惑しているのが感じられる。


思うところは多々あるけれど、相手は一国の王太子。
そして自分は国を、彼を、守る騎士を目指し、見習い中の身だ。
本来なら、セドリック相手にこんな態度をとっていいわけがないのだ。


アデルは毛布の中でスーハーと大きく深呼吸をして、どうにか自分を落ち着かせた。