碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

つい先ほどセドリックにかけられた言葉を思い出し、鼻の奥の方がツンとしてくる。
アデルは寝台の上で身体を小さく丸め込んだ。


「ひ、人の唇、何度も奪っておいて、バカにしてる」


アデルは思わずそう呟き、途端に身体を火照らせた。


アデルにとって、初めての接吻だった。
それをあんな形で呆気なく奪われてしまったことがショックだったし、完全にのまれてしまい抵抗もできなかった自分が悔しい。


しかし、忘れなければ、とアデルは強く頭を横に振った。
今朝の稽古では、ついフッと思い出して心が乱れてしまい、その隙を突かれ剣を弾かれてしまったのだ。
こんなことでは、アデルの騎士としての評価にも傷がつく。


「せ、接吻くらいで、こんな」


忘れろ忘れろ、と自分に言い聞かせながら、アデルは何度も自分の唇を手の甲で擦った。
そうやって、セドリックの唇の感触を、全部自分から消してしまいたかった。
それなのに。


「アデル。いるだろ? 入るよ」


ドアをノックする音と同時に、外からセドリックの声が聞こえてきた。
アデルはギョッとして、勢いよく身体を起こす。


「セ、セディ!? ダメ、入ってこないで!」


アデルが慌てて返事をした時には、既に外からドアが開かれていた。