「えっ!?」

「だって、僕が最初に会った時、彼女、ライアンと話していたじゃないか。何? ……もしかしてライアンの恋人……だったとか。それで、僕に見つからないように隠してる?」


セドリックが更に突っ込んで問いかけると、ライアンは大きく首を横に振った。


「いやいやいや!」

「ほんとに~? ……って、それなら僕が彼女に求婚しても、なんの問題もないってことだ」


返ってきた反応にホッとしながら意地悪に言葉を続けると、ライアンはセドリックをジッと見つめてきた。


「……何?」

「セディ。突っ込んだことを聞くが……彼女のどこに惚れたんだ?」


更に探ってくるライアンに、セドリックは一瞬息をのんでから、口元にフッと笑みを浮かべた。


「ライアンが彼女を探し出してくれたら、答えるよ」

「なっ……セディ!?」


ライアンのひっくり返った声を聞きながら、セドリックは立ち上がった。
軽く衣服の裾を叩き、座ったままのライアンに視線を下ろす。


「……瞳、かな」


セドリックは、ライアンから目を逸らしながら、一言短くそう告げた。
「え?」と聞き返される声には、黙って首を横に振る。


「行くよ。公務があるから」


セドリックはそれだけ言ってライアンに手を振ると、黒いサーコートを羽織り回廊に戻っていった。