随分とシレッと返されたが、セドリックは目を剥いて聞き返した。


幼い頃から、王太子の自分と同レベルの剣の腕を持ち、最近ではちょっとの隙でも見抜かれる。
気を抜けば負ける時もある女騎士見習いだ。
そんな彼女が、一介の騎士相手に稽古で負けるなど、いったいいつ以来だろう。


「アデルだって、百戦錬磨じゃないよ。ああ見えて女なんだから。アデルに敵わない男騎士ばかりじゃ困る」


軽く笑うライアンに、セドリックは納得いかない思いで首を傾げた。


「ライアン相手なら、わかるけど」

「俺だってアデルに負ける時くらいある。セディだってそうだろ?」

「……まあな」


軽くあしらわれた気分で、セドリックはわずかにムッと表情を歪めた。
そんな彼を横目に見ていたライアンが、『なあ』と声をかけてくる。


「昨夜の姫君……お前、本気か?」


探るような言葉と視線に、セドリックはキュッと唇を噛んだ。
そして、ゆっくりとライアンに顔を向ける。


「本気じゃなきゃ、求婚なんかしない」

「……だよな」

「なあ。それなら僕も聞くけど、彼女……ライアンの知り合いじゃないのか?」


セドリックが間髪入れずに畳みかけた質問に、ライアンはギョッとしたように目を見開いた。