『城門を警備していた騎士からは、それらしい姫君が逃げ帰ったという報告は受けていない。まだ城内……いや、少なくともこの近辺にいるはずだ。なにがなんでも探してくれ』


お妃選びの誕生パーティーはその一件でお開きとなり、立太子宣明の儀も曖昧なままになってしまった。
セドリックは自ら騎士団を先導し、『プラチナブロンドの髪にエメラルドの瞳』の姫君を探して、一晩中駆け回ってしまったのだから。


しかし、彼の言う通りの『姫』がすぐそこにいるにも関わらず、セドリックは気付かなかった。
『自分』の捜索に現れた、騎士姿のアデルを見ても……。


怒り心頭の妹を前に、ライアンはどうしたもんかと考えを巡らせた。


幼い頃から一緒に育ったライアンから見れば、アデルがどう思おうとセドリックが本気なのはよくわかる。
だからどちらも責められない。
彼はまさに板挟みの状態にあった。


(もう一度アデルにドレスを着せてセディの前に連れていければ、それが一番簡単なんだけどな……)


しかし、それを強いればアデルは烈火のごとく怒りそうだ。
それに、ライアンは兄として妹の気持ちもわかっている。


(そりゃ、悔しいよな……今までずっとそばにいたのに、着飾ったくらいで呆気なく求婚されちゃあ)