『さっきの言葉は』と告げようとして、アデルは言葉をのんだ。
アデルの胸の鼓動は、ドキドキを通り越してドッドッと打ち鳴っている。
全身の至る所で血管が脈動するのがわかるほど、彼女はこの事態に動揺していた。


セドリックが見ているとわかっていながら、無意識に唇に触れてしまう。
そこにセドリックの唇の感触を蘇らせて、アデルは全身をカッと火照らせた。
そんなアデルに、セドリックもわずかに頬を染める。


「騎士たちから隠そうとした、というのはその通りなんですが……それだけなら、何も口付けまでしなくてもよかったわけで……」


セドリックはアデルから微妙に目線を逸らし、唇に手の甲を当てながら、ゴクッと唾をのんだ。
そして。


「参ったな……自分でも信じられない。僕は……君に一目惚れをしたみたいだ」


ボソボソと小さな声で呟くセドリックに、アデルは大きく目を見開いた。


「えっ!?」

「驚かないで。……ごめん。僕の方が驚いてるんだ。こんなの……初めてで、どうしたらいいかわからない。……でも」


セドリックは混乱する自分に困惑しながら早口で言いのけ、アデルにしっかりと向き合うと、彼女の手をぎゅっと包み込むように両手で握り締めた。


アデルがビクッと震えるのを感じながら、セドリックは澄んだ蒼い瞳に真剣な光を宿した。
戸惑いに揺れるアデルのエメラルド色の瞳を、再び射貫くように見つめてくる。