突然すぎるセドリックの宣言に、ライアンだけでなくやっと我に返ったアデルも同時に声をあげた。


「姫、あなたは紛れ込んだだけのつもりかもしれませんが、今夜のパーティーは私のお妃選びの為に開かれたものです。故に、ここにいる以上、私があなたを選んでも誰にも咎められることはない」

「セ、王太子殿下、お戯れはやめ……」

「戯れではありませんよ」


いつも以上にキリッと堂々と言い放つセドリックに、アデルはそれ以上の反論を完全にのみ込まれて黙り込んだ。
ライアンもゴクッと喉を鳴らして、アデルをジッと見つめている。


「……わ、わかった。ご報告してくる」


ライアンはこの場をどう収集すべきかと考えながら、一歩後ずさって返事をした。
彼はアデルに必死に目配せをしてくる。
それを受けたアデルは、ライアンが自分に『とにかく隙を突いて逃げろ』と言っているのを感じ、慌てて何度も頷いて見せた。


ライアンがバルコニーから出ていき再び二人きりになると、セドリックはアデルから腕を解きながらふうっと口をすぼめて息をついた。
そして、「申し訳ありませんでした」とアデルに丁寧な謝罪をする。


「先ほどは、いきなりご婦人に無礼な真似を……お詫びします」

「い、いえ……王太子殿下は、私を騎士たちから隠してくださろうとしたんでしょうから……で、でも、あの……」