碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

その時、背にした窓が、カチリと小さな音を立てて開く気配がした。
アデルは慌てて仮面を顔に着け直し、そおっと背後を振り返った。
途端に、ギクッと身を竦ませる。


「ああ、こんなところにいらしたんですか。広間に見当たらなかったので、探しました」


そう言ってバルコニーに足を踏み出してきたのは、緋色のマントを纏ったセドリックだった。


「ど、どうしてここに? ダンスはいいんですか」


セドリックの言葉も気になるが、彼と二人きりになってしまったことの方が問題だ。
アデルはセドリックに身体の正面を向けて向かい合った。
背を柵にへばりつけるようにして、彼との間合いを測りながら窓に近付こうとする。


彼女の目線に気付いたのか、セドリックは「ああ」と肩を竦めてにっこりと笑った。
どこから見ても完璧な王子の微笑みに、アデルの胸が一瞬ドキッと高鳴る。
そして、そんな自分に、アデルは困惑した。


「人に酔ったので。夜風に当たって醒ましたくなりました。……あなたはいつからここに?」


セドリックは魅惑的な笑みを浮かべたまま、アデルの方に一歩ずつ歩み寄ってくる。


「広間の中は人いきれで熱いくらいなのに、あなたの頬は透き通るように白い。随分と長いこと、ここにいらしたのでは?」


アデルは背にした柵を回り込みながら、彼との距離を必死に保とうとしていた。