碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

広間から聞こえてくるダンスの曲がワルツに変わった。
広間の隅っこどころか、窓の外のバルコニーに避難していたアデルは、春の夜風に身を震わせながら、肩越しに広間を振り返った。


王宮楽団が奏でる三拍子の軽快で華やかなワルツがアデルの耳をくすぐり、彼女の心を浮き立たせてくれる。
パーティーもドレスも苦手だが、アデルもダンスは嫌いではない。
リュートの伸びやかな音色に導かれるように、彼女の唇が『うんたったうんたった』と拍子を刻み始めた。


そうしてみると、ダンスが繰り広げられている煌びやかな広間に背を向け、屋外のバルコニーで肩を竦めて震えている自分が、とても哀れで惨めな気分になってくる。
アデルは自分の二の腕を摩りながら、無意識に声に出して溜め息をついていた。


こんなところに隠れているくらいなら、いっそ騎士団の宿舎、自分の部屋に戻ってしまってもいいのではないかと思っていた。
しかし、広間の中には父がいる。
ドレスでの出席は両親の命令だし、パーティーが終わるまではこの場にいないと、後になって問われた時に言い訳もできない。
だからアデルは、無意味だとわかっていても、ダンスの曲が途絶えるのをひたすら待つしかなかったのだ。