碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「っ、アデ……!」


ライアンがギョッとしたように声をあげ、慌てて言葉を飲み込むのがアデルの耳にも届いた。
しかし、もっと近くからセドリックの声がアデルの耳をくすぐる。


「姫君、大丈夫ですか? お怪我は?」


耳元でそう訊ねられ、アデルは彼から飛び退くように離れた。


「も、申し訳ありませんっ……」


ずれそうになる仮面を慌てて手で押さえながら、アデルは勢いよく頭を下げた。
そんな彼女の反応に、セドリックは面食らってきょとんと目を丸くしている。


しかし、セドリックは社交界慣れした王子だ。
どんな姫君でも女性の扱いならお手の物。
そんな余裕からか、すぐにニコッとアデルに微笑みかける。


「ああ、いえ。お気になさらず。……ところで、なぜ仮面を? どちらからいらした方ですか?」


どこまでも紳士的な笑みを浮かべたまま、セドリックは真っすぐアデルを見つめる。
アデルは顔を俯けたまま、黙って一歩後ろに退いた。


マスクの下の顔は、焦りと緊張と説明できないドキドキで、真っ赤に染まっていた。
ジリジリと逃げる彼女の反応に、セドリックも不思議そうに首を傾げる。


「どうされました? どこか気分が優れないとか……」

「い、いえ。大丈夫ですから!」


心配しながら手を伸ばしてくるセドリックから、アデルは更に一歩後ずさって、拒むように首を横に振った。