碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「っと、セディ……!」


兄の口がそう動くのを見て、アデルはますます身体を強張らせた。
ライアンに暇を告げて、この場から離れるべきだとわかっていても、足が竦んで動けない。


そんなアデルに気付く様子もなく、セドリックは二人の方に近付いてくる。
アデルの耳に届く彼の靴音は、段々と大きくなる。


「ライアン。今日、アデルは?」

「え?」


背後で足音が止まるのと同時に、セドリックが自分の名前を口にするのを聞いて、アデルはますます凍りついた。
彼女の反応を真正面から見ているライアンも、ギクッと頬を引き攣らせながら、「さあ?」と惚ける。


「セディ。アデルに何の用だ?」


逆に質問を返しながら、ライアンはアデルに『早く行け』とばかりに目配せをした。
それを見て、アデルはペコッと小さく頭を下げ、俯いたまま振り返る。
そして一気にセドリックの横を走り抜けようとした、が……。


「っ……」


焦り過ぎて、ドレスの裾を気にする余裕もなかった。
走り出そうとしたその第一歩で、アデルはドレスの裾を踏んで躓いてしまう。


「危ない」


転びそうになるアデルに、セドリックはとっさに腕を伸ばしていた。
身体のバランスを崩したアデルは、セドリックの肩口に飛び込むように倒れ込んでしまった。