セディと呼ばれた彼は、ライアンの視線に深く澄んだ蒼い瞳を向け、肩を竦める仕草を見せた。


一見しただけで、血筋の良さが感じられる、聡明で整った顔立ちの男性だ。
それもそのはず。
彼が纏っているマントは、この国では王族のみが身に着けることを許されている緋色。
マントに縫いつけられた剣と鷹の翼をモチーフにした紋章は、このフレイア王国の王家の物だった。


返事を促されているのが彼でなくとも、自然と目が惹かれてしまう。
アデルの視線を一身に受けた彼が、『ああ』と頷いた。


「ライアン。兄の君も、気を抜いてられないんじゃないかな? いくら女と言っても、これだけ強ければ、王太子軍騎士として徴用してもいいかなと思うよ。僕は」

「本当!? セディ……いえ、セドリック王太子殿下」


『おい』とライアンが諫めるような声をあげるのを、アデルは目を輝かせて遮った。
そして、自分より頭一つ分背の高い王太子の前に進み出る。
そんな彼女を顎を引いて見下ろして、碧眼の王太子はクスッと笑った。


「堅苦しいね。いつも通り、セディ、でいいよ。アデル」

「セ、セディ! 私ね、ここのところ、どんな男性騎士にも訓練じゃ負け知らずなのよ。この分なら、叙勲して立派な騎士になったお兄様と同じくらい、役に立てる自信は……」