「いや、さすがにそこまでは言わないだろうけど……」


自分で数え上げながら不機嫌に表情を歪めるアデルに、ライアンは口元を押さえて考えるように言葉を切った。


「それだけじゃない。こんなチャラチャラした格好の騎士、王国騎士団にはいらないとか、バカにする」


悔しげに唇を噛むアデルに、ライアンは肩を落とした。
そんな酷いことを言う男じゃないとは思っていても、追い詰められたアデルの気持ちもよくわかる。


「……恥ずかしいんだろ? 結局」


ガシガシと頭を掻きながら、ライアンはボソッと呟いた。
彼の言葉がよく聞こえなかったのか、アデルが涙目で「え?」と聞き返してくる。


「あ、いや。まあ、それもそうだよな。お前小さい時から女らしい格好するの嫌いだったし、俺でも見慣れないくらいだ。セディは絶対見たことないはずだし、こんなお前見たらきっと……」


アデルにはちょっと濁した返事をしながら、ライアンはもう一度姫君に囲まれているセドリックの姿を探した。
ここからでは、綺麗なブロンドの髪が人垣の向こうにチラチラと見えるだけだ。


「お兄様?」


アデルは断片しか聞こえなかったライアンの独り言に首を傾げて、不思議そうに彼の顔を見上げている。