「見つからないようにって。どうやって?」


ライアンは嬌声をあげる姫君たちを見遣りながら、目の前で悲壮な表情を浮かべるアデルに聞き返した。


「あの様子じゃ、自ら輪の中に入って行きさえしなければ、セディの半径一メートル以内に近寄れないんじゃないかとも思うけど……」

「近寄らないわよ、もちろん!」


どこか呑気に呟く兄に憤慨しながら、アデルは一歩詰め寄った。


「近寄らないけど、見つかりたくないの! こんな格好してる私に気付かれるなんて、堪ったもんじゃない!」

「……遠目なら、絶対に気付かないとは思うけど」


ライアンは顎を引いてしげしげとアデルを見下ろした。
そして、ふむ、と口をすぼめる。


「でもまあ確かに……もしセディがアデルに気付いたら、相当びっくりするだろうな」


まるで他人事のような兄の言葉に、アデルは焦れて泣きそうになった。


「びっくりじゃ済まない。絶対に意地悪なこと言って、からかうに決まってる!」

「なんて?」

「似合わないとか、今日は女みたいだねとか」


聞き返されたアデルは、セドリックが言いそうな意地悪を思いつく限り口にして、指折り数えた。