「なんだ? お前、その格好。まさか、本当にセディのお妃候補に紛れ込むつもりか?」
ギョッとしたように目を剥いて訊ねるライアンに、アデルより先に父が眉を寄せた。
「ライアン、何を言っている。紛れ込ませる必要などない。アデルは王家のパーティーにも、堂々と出席していい侯爵令嬢だぞ」
「は……それはそうかもしれないけど……」
即座に返される父の厳しい声に、ライアンは戸惑ったように声を消え入らせた。
そして、再びアデルに視線を向ける。
アデルは黙ったまま、切羽詰まった悲壮な表情でライアンを見上げている。
そんなアデルの表情から、ライアンも彼女が両親の策略でパーティーに送り込まれたことを察した。
『やれやれ』とばかりに、彼は肩を竦めて溜め息をついた。
「父上。国王陛下が話したいことがあると仰せられておりました。到着次第、顔を出すようにと」
ビシッと背筋を伸ばして国王からの伝言を告げるライアンに、父は小さく頷き返し、アデルの背を軽くトンと押した。
「ライアン、アデルは頼んだ」
「はい」
大股で颯爽と離れていくその背が見えなくなるまで、兄妹は敬礼の姿勢で見送る。
やがてその背がパーティー客の間に紛れ消えていくと、ライアンが肩を落として大きな息を吐いた。
ギョッとしたように目を剥いて訊ねるライアンに、アデルより先に父が眉を寄せた。
「ライアン、何を言っている。紛れ込ませる必要などない。アデルは王家のパーティーにも、堂々と出席していい侯爵令嬢だぞ」
「は……それはそうかもしれないけど……」
即座に返される父の厳しい声に、ライアンは戸惑ったように声を消え入らせた。
そして、再びアデルに視線を向ける。
アデルは黙ったまま、切羽詰まった悲壮な表情でライアンを見上げている。
そんなアデルの表情から、ライアンも彼女が両親の策略でパーティーに送り込まれたことを察した。
『やれやれ』とばかりに、彼は肩を竦めて溜め息をついた。
「父上。国王陛下が話したいことがあると仰せられておりました。到着次第、顔を出すようにと」
ビシッと背筋を伸ばして国王からの伝言を告げるライアンに、父は小さく頷き返し、アデルの背を軽くトンと押した。
「ライアン、アデルは頼んだ」
「はい」
大股で颯爽と離れていくその背が見えなくなるまで、兄妹は敬礼の姿勢で見送る。
やがてその背がパーティー客の間に紛れ消えていくと、ライアンが肩を落として大きな息を吐いた。
