「っ……」
アデルは気が急いたように小さな声を漏らし、凭れかかっていたシートからガバッと背を起こした。
その途端、逆にシートに吸い込まれるような感覚に襲われ、彼女の身体がガクッと揺れる。
窓の外から、高らかな馬のいななきが聞こえた。
馬車を引く二頭の馬の蹄の音と、地面を勢いよく転がる車輪の音が、先ほどまでより大きく耳に響く。
どうやらスピードが上がったようだ。
軽く弾むような車体の振動が激しくなったように感じ、アデルの焦りは極限まで高まっていく。
落ち着かない気分で、横に顔を動かす。
窓にかかるビロード素材の厚いカーテンを指でちょいっとずらして、アデルは外を覗き見た。
どうやら森の悪路を抜け、城下町に入ったらしい。
馬車のスピードが上がったのは、その為だろう。
窓の外に広がるのは、アデルも巡回でよく訪れる市場の見慣れた風景だ。
更に身を乗り出して窓に張りつくように目を凝らすと、小高い丘の上に堅牢な石城が大きくくっきりと見える。
馬車は城に続く一本道に突き進む。
城門を抜けるまで、後ほんの数刻だ。
(ああ……どうしよう……)
カーテンをしっかり締め直し、アデルは窓から目を逸らした。
何層にも重ねられたレースのスカートの上で、手をギュッと握り締める。
アデルは気が急いたように小さな声を漏らし、凭れかかっていたシートからガバッと背を起こした。
その途端、逆にシートに吸い込まれるような感覚に襲われ、彼女の身体がガクッと揺れる。
窓の外から、高らかな馬のいななきが聞こえた。
馬車を引く二頭の馬の蹄の音と、地面を勢いよく転がる車輪の音が、先ほどまでより大きく耳に響く。
どうやらスピードが上がったようだ。
軽く弾むような車体の振動が激しくなったように感じ、アデルの焦りは極限まで高まっていく。
落ち着かない気分で、横に顔を動かす。
窓にかかるビロード素材の厚いカーテンを指でちょいっとずらして、アデルは外を覗き見た。
どうやら森の悪路を抜け、城下町に入ったらしい。
馬車のスピードが上がったのは、その為だろう。
窓の外に広がるのは、アデルも巡回でよく訪れる市場の見慣れた風景だ。
更に身を乗り出して窓に張りつくように目を凝らすと、小高い丘の上に堅牢な石城が大きくくっきりと見える。
馬車は城に続く一本道に突き進む。
城門を抜けるまで、後ほんの数刻だ。
(ああ……どうしよう……)
カーテンをしっかり締め直し、アデルは窓から目を逸らした。
何層にも重ねられたレースのスカートの上で、手をギュッと握り締める。
