枢密院の厳しい審査の末選ばれた候補者たちは、絶世の美女ばかりと思っていい。
そんな姫君たちを差し置いて、自分がセドリックの目に留まるとは思わない。


父と母はこの姿を『美しい』と言ってくれたが、それはどう考えても親の贔屓目だ。
アデルもそこを真に受けて浮かれるつもりは毛頭ない。


少なくとも、セドリックがアデルのこの姿を見たら、きっと笑い倒すだろう。
いつもの調子で『アデルでも、ドレスを着れば女の子みたいだね』程度の意地悪は言うに違いない。


たくさんの美しい姫君の前で、そんな風にからかわれようものなら、いくらアデルでも傷つくというものだ。
それに……。


(それだけじゃない。私は王国の見習い騎士なの! 叙勲前だと言うのに、こんなチャラチャラした格好で王子の誕生パーティーに出る騎士が、どこの世界にいるって言うの。前代未聞だわ……!!)


そう、一番の問題はそこだ。
今まで厳しい訓練に耐えてきたのに、一応『主君』に当たるセドリックに『浮ついている』と思われたら、騎士として叙勲を受ける日が遠のいてしまう。


(やっぱりダメ。絶対セディに気付かれるわけにはいかない……!!)


深まる自分の思考に煽られるように、アデルの悲壮感は強まっていく。