十字に交差した二つの刀身が、微かな火花を散らしてキーンと鋭い音を鳴らす。


「くうっ……」


寸でのところで防御した男性騎士が、上からの力に耐えるように顔を歪ませるのを見ると、女性騎士は居合を解き、相手に構え直す隙を与えず、素早く剣を横に払った。


「あっ……!」


男性騎士の手から、剣が弾き飛ばされた。
二人の騎士は、剣の行方を目で追う。
その剣がカランと音を立てて地面に落ちるのと同時に、二人の背後から『お見事!』と声があがった。


「参りました、アデル様……」


剣を弾かれてしまった男性騎士が、肩で息をしながら女性騎士を称える。
アデルと呼ばれた女性騎士は、相手の騎士にニコッと微笑みかけてから、額に浮かんだ汗を手の甲で拭って振り返った。


「さすがだな、アデル。また腕を上げたんじゃないか?」


パンパンパンと数度拍手をしながら、城に続く回廊から逸れ訓練場に向かってくるのは、アデルの兄、ライアンだった。


「お兄様。見ていたの?」


アデルはそう問いかけながら、ライアンの後ろから歩いてくる長身の男性にチラリと視線を向ける。


「セディと一緒にね。な?」


ライアンは自分の後ろでサクッと土が鳴るのを耳にして、同意を求めるように振り返った。
ライアンの後ろに立ったのは、輝くほど美しいブロンドの髪の男性だ。