広間近くまで来ると、普段から訓練で剣を交える騎士たちが配置されていた。
その誰もが騎士の正装姿のアデルに一度目を遣り、一瞬後にギョッとしたように振り返る。


「アデル!?」


何人かの騎士が、ひっくり返った声で呼びかけてくる。
しかし、ここまで来たら彼らに話を聞くよりも、自分の目で確認した方が早い。
そんな思いで気ばかりが逸り、アデルはなりふり構わずに広間のドアに手をかけた。
そして、力任せに大きく開く。


「っ……」


一歩足を踏み入れた途端、アデルはあまりの眩しさに目を眩ませ、その場でピタリと足を止めた。
咄嗟に目の上に腕を翳して光を遮り、一度大きく息を吸ってから、恐る恐る腕をどける。
アデルはゆっくりと広間を見渡した。


煌びやかだった。
セドリックの誕生パーティーが行われた夜と同じように、すべてのシャンデリアの蝋燭に火が点され、多角形のガラスに反射して眩いばかりに輝いている。


中央には真紅の絨毯が広げられ、ドアから一番離れた一角で、王宮楽団がチューニングをしていた。
弦と管の繰り出す音が、賑やかだ。
広間の至る所に、たくさんの召使いたちが控えている。
アデルと同じ正装服を身に着けた騎士たちも、それぞれ既に配置についていた。