今日のパーティーに招待されたのはフレイア王国に隣接した国の姫君たちだから、到着は開始直前になるのかもしれない。
とは言え、前日のうちに入国して、城内に部屋を用意されている姫君が一人や二人いてもおかしくない。
しかし、そういった姫君やその従者たちの気配が、城内にはこれっぽっちも感じられない。


招待客が誰一人揃わないまま、パーティーだけが催される。
そんな様子だったのだ。


アデルが城のパーティーの警護に就くようになったのは、ここ最近のことだ。
しかし、パーティー当日、しかも夕暮れを過ぎたこの時間、これほどまでに城がひっそりしているのは初めてだ。
慣れない空気に、アデルの胸に不安が過る。


(もしかしたら……主役のセディに何かあって、急遽中止になったとか……?)


背筋に冷たい汗が伝うのを感じ、アデルはゴクッと喉を鳴らした。


アデルは昨夜も訓練の後セドリックを訪ねたが、彼の顔を見ることは叶わなかった。
今日は今日で週に一度の休みに当たっていた。
重要任務を前にして、母のご機嫌伺いはさすがに取りやめていたが、アデルは誰とも顔を合わせることなく、自室で過ごしていた。
だから情報が伝わらなかったのかもしれない。


一度思考がその方向に定まると、アデルは落ち着かない気分で階段を駆け上がった。