あの事故の後、セドリックもライアンもアデルに『怪我がなくてよかった』と言ってくれた。
強い心で守られて、アデルは初めて、守ることの難しさに打ちのめされた。


しかし今、アデルの胸に過る強い想い。
それは――。


「私にも守りたいものがある」


セドリックに試された決意を、今自分の口で声に出す。
それはアデルの胸に深く浸透して、膨らむ覚悟を揺るぎないものにしてくれる。


アデルは窓にかかるカーテンを開け、その前に真っすぐ立った。
窓に映るアデルの瞳は、昨日までとは比べ物にならない、強い輝きを取り戻している。


アデルは暗闇に浮かび上がる自分を見つめ、懐からナイフを取り出した。
軽く頭を振り、長いプラチナブロンドの髪を胸の前に垂らす。
それを一房、左手でギュッと握り締め――。


(これが私の忠誠。セディへの決意の証……)


アデルは一度ギュッと目を閉じてから、長い髪にザクッとナイフを入れた。
同じ行為を何度も繰り返した後、右手からナイフを床に落とす。
カタンという音を聞きながら、彼女は左手に残った長い髪の最後の一房を床にパラパラと落とした。


一度足元に視線を向け、足元に山を作っている自分の髪を見つめた。
彼女は何かを吹っ切るように大きく顔を上げ、再び窓に映る自分を見据える。


背中半分まであったプラチナブロンドの髪は、今は無残にも切り落とされ、肩の上の長さで揺れている。
しかし、エメラルド色の瞳は、キラッと輝いていた。