ライアンに遅れること七年。
王国初の女性見習い騎士として騎士団に入隊したアデルは、日々訓練を重ね、セドリックの稽古相手として指名されるまでに上達した。
騎士の道を進むアデルの評価は上々、まさに順風満帆だった。


とは言え――。
アデルは社交界デビューも済ませている、お年頃の侯爵令嬢だ。
良家のご令嬢ともなれば、十五や十六で、同等かそれ以上の家柄の子息に嫁ぐのが当たり前のこの時代。
既に十七を過ぎたのに、騎士としての務めに夢中で縁談からは逃げてばかりのアデルに、母の嘆きは計り知れない。


普段アデルは、他の男性騎士と同じように城内の宿舎に部屋を与えられ、屋敷を離れて生活している。
一緒に暮らしていないのをいいことに、最初のうちは母のお小言も右から左に受け流していられたが、一人娘の行く末を悲観して年々ヒステリックになっていく母を、アデルもさすがに放っておけない。


最近では、週に一日の休暇を利用して、母のご機嫌伺いに屋敷を訪れるのが習慣になっていた。


そしてまさに今日。
屋敷に戻ったタイミングで、アデルは父と共謀した母の罠に、まんまと嵌められてしまったのだ。