碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

嬉しかった。楽しかった。
ただその一心で、騎士を目指すことにも訓練漬けの毎日にも、アデルはなんの疑問も持たなかった。


(セディのそばにいたかった。私はいつもそれだけの為に剣を振って、騎士を目指していた)


彼への恋心に気付いてしまった今となっては、甘く短絡的な意識で騎士を目指していた自分を、アデルは否定できない。
今、アデルは、自分は騎士失格だと自覚していた。


セドリックが狩猟のお供に就くよう命じた時の、『覚悟して臨んで』という言葉が、アデルの心を深く抉るように巣食っている。
見抜かれていた。アデルはそれを認めざるを得ない。


(私はどうしたら……)


訓練場の片隅で、アデルは深い溜め息をついた。
アデルの心は、まるで振り子のように行ったり来たりで、留まるところを知らない。


ふと顔を上げると、太陽はだいぶ西に傾いていた。
訓練場には風が出てきて、彼女の長い髪を揺らす。
頬を撫でる風は、夜露を含んでいるかのように、どこかひんやりとしている。


今日の訓練が終わる時間だ。
アデルは腰に下げた剣の柄をそっと握る。


最後にもう一度、誰かにお手合わせを願おうか。
そんな言葉で自分の背を一押しして、立ち上がった時。


「アデル」


名前を呼ばれて振り返ると、ライアンがゆっくり近付いてきた。