碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

アデルは勢いよく身体を起こし、胸に手を当てながらセドリックを見下ろす。
彼は固く目を閉じたまま、もう一度「頼む」と唇を動かした。


アデルの胸は、理解しがたい加速度を伴い、ドキドキドキと打ち鳴っていた。
一度ゴクッと唾をのみ、掠れた声でセドリックに返事をする。


「に、二週間後だよ。セディがこんな大怪我なのに、お妃選びなんて……」


パーティーなど延期になるに決まっている。
アデルはそう思っていたし、任務だからと安請け合いできる頼みじゃないという心境だった。


しかしセドリックは「中止にはしないよ」と言って、アデルを遮った。


「招待状は送られてるんだ。今更、中止になどできない。……医師は、二週間も経てば、痛みは引くって、言ってたから……」


セドリックの声は、だんだん途切れ途切れになっていく。
痛み止めが効力を発し、彼の意識が眠りに吸い込まれていくのがわかる。
固く閉ざされた目蓋の下の、サファイアのように輝くセドリックの瞳を脳裏に描き、アデルはギュッと唇を噛む。


「……わかった。必ず、警護に就くね」


そう言った瞬間――。
アデルの口から、堪え切れない嗚咽が漏れた。
しかしセドリックは、スースーと規則正しい寝息を立て始めている。


この泣き声が、セドリックに聞こえなくてよかった。
そんな思いで肩を震わせながら、アデルはガクッと床に膝をついた。