『アデルは女だから』と仲間外れにされるのが嫌で、ほとんど必然的に剣を振っていたアデルだが、屋敷で母や家庭教師から教わる『花嫁修業』に勤しむよりもずっと彼女の性に合っていたのだ。


やがてライアンが十歳で騎士の見習いとして王宮入りしてしまうと、それまでのように三人で剣を交わすことはなくなってしまった。
アデルはそれが堪らなく寂しくて、自分も躊躇うことなく騎士団への入隊を希望した。
しかし、王国騎士団に女性騎士が採用された前例はなく、もちろんアデルの入隊もすんなりとは認められなかった。


アデルは自分の腕を知ってもらう為に、王宮主催の剣術大会にも積極的に参加した。
誰よりも小柄で、しかも年端のいかない少女のアデルが、自分の倍近い体格の男性騎士に挑む姿は、誰の目にも微笑ましく共感を生み、称賛された。


そうして、彼女の剣の腕は、国王や他の騎士の間でも瞬く間に噂になった。
騎士団長である父も、アデルの意志が固い以上、娘を止めることはできなかったのだ。