誰に言われずとも、アデル自身が認める。


(私は何もかも中途半端で、未熟で……こんな私、騎士失格だ)


止まったはずの涙が再び込み上げてくる。
鼻の奥の方がツンとするのを感じ、アデルは両手を顔に当て、声を殺して泣いた。


その時、前方でドアが開く音がした。
アデルがハッと顔を上げると、ずっと閉ざされていたセドリックの部屋のドアが開き、治療に当たっていた医師たちが廊下に出てくるところだった。


「っ……あのっ……!」


居ても立ってもいられずに、アデルは彼らに駆け寄った。


「セディは……?」


悲壮な表情で問いかけるアデルに、顔見知りの医師が『大丈夫ですよ』と答えてくれた。
他の医師が引き上げていくのを見送りながら、その医師は彼女にセドリックの容体を教えてくれる。


「さすが王太子殿下ですな。頸椎や脊髄に損傷が残ってもおかしくない状況だったのに、しっかり受け身を取っていた為、奇跡的に神経系は無傷でした。右肩関節の脱臼と、全身の強い打撲。肋骨を二本骨折していて、わずかながら肺を傷つけているようですが、重傷ではあっても命に別状はありません」


医師は割とサラッと言うが、それは相当な大怪我だ。
ホッとしたような、却って怖くなったような、どっちつかずの感覚で、アデルはその場にへなへなと座り込んだ。


「アデル様」


医師が慌てたように手を貸してくれる。