セドリックに突っ込まれたアデルの身体が、大きく馬上から傾く。
その手からスルッと手綱が離れた途端、セドリックはアデルを両腕に抱え、無我夢中で身体をくるりと反転させた。


そして、飛び込んだ勢いを殺すこともできないまま、疾走する馬から吹っ飛ばされるように地面に叩きつけられた。


「っ、く、ううっ……」


背に強烈な衝撃を感じた瞬間、セドリックはくぐもるような苦痛の悲鳴を漏らした。
その声と全身を襲った衝撃で、アデルは意識を取り戻したようだ。


「セ、セディ……？　セディ！？」


窺うようにか細かった第一声が、次にはつんざくような叫びに変わる。


「セディ！　セディ、大丈夫！？」


アデルの声が空に響き渡る中、彼女の身体に回っていたセドリックの両腕からドッと力が抜けた。
彼女の背から滑り落ちた彼の両腕が、地面に伸びる。


身体の至る所から伝わる猛烈な痛みで、気が遠くなるのを感じながら、セドリックは薄く目を開けた。
落馬した瞬間、二人の身体が巻き起こした土埃が、まだもうもうと立ち込めているのがわかる。
黄土色に濁る視界の中で、アデルが泣きながらセドリックを見下ろしていた。