どこまでも飄々としたセドリックのペースに任せていたら、このまま煙に巻かれそうだと思った。
ライアンは一際大きな声を張り上げて、セドリックを遮った。


言葉を途中で止められたセドリックは、わずかに不機嫌そうに肩を竦める。
それでも、「アデルが、何?」と促され、ライアンは大きく深呼吸をした。


「今まで狩りだけは怖がって、ずっと避けて通してきたんだ。確かに狩りの供は騎士の任務でもあるが、そういうのを怖がるとこも、アデルの数少ない女らしい部分だと思うから、俺は黙認してきた。狩りの供ができなくても、それだけで騎士失格ってわけじゃないだろう、なのに……!」

「ライアン。誤解してるようだから、言っておく。僕は今まで一度だって、アデルを『女じゃない』なんて思ったことない」


吐き捨てるように言い切ったライアンを、セドリックの凛とした声が遮った。
不快気に眉をひそめたセドリックの表情に、ライアンも威圧されたように口を閉ざす。


そんなライアンを見つめて、セドリックはわずかに相好を崩した。
そして、ゆっくりと明瞭な声でライアンに語りかける。


「確かに君の言う通り、アデルは男勝りで怖いもの知らずで無鉄砲で、僕も彼女に女らしさなんかちっとも感じない。でもね」