「ライアン」


セドリックはいつもと変わらない笑顔を浮かべ、ライアンに呼びかける。


「ちょうどよかった。この後君を呼んで話がしたいと思ってた。パーティーでの騎士団の警備体制の件で……」

「セディ。先に俺の話を」


にこやかに語りかけるセドリックを、ライアンはどこか強張った声で遮った。
到底穏やかではない彼の剣幕に、セドリックもわずかに眉を寄せる。


一瞬探るように小首を傾げたが、彼にもライアンの用件はわかっているだろう。
小さく肩を竦めると、セドリックは楽団長に軽く手を振って人払いを命じた。
それを見た楽団長は、彼に恭しく頭を下げる。


「曲目は、あなたが提案してくれた物でいい。とにかく明るく。華やかになれば」

「はい。かしこまりました」


頭を上げた楽団長は、ライアンにも黙礼して、広間の出口に向かっていく。
その背がドアの向こうに消えるのを見て、ライアンは再びセドリックに顔を向けた。


「なんだい? ライアン。随分と機嫌悪そうだけど?」


軽い調子で促すセドリックに、ライアンは眉間の皺を深く刻んだ。


「アデルから聞いた。来週の鹿狩りのこと」

「そう」

「お前、どういうつもりだ?」