その感触にビクッと肩を竦ませる彼女から手を引っ込めると、セドリックは転がった剣を地面から拾い上げた。
それっきり何も言わず、アデルに背を向けてしまう。


「い、行く。お供するわ」


アデルは無意識にそう声を張り上げていた。
どこか切羽詰まったような彼女の声に、セドリックも足を止める。
そうして、ゆっくりと上体だけで優雅に振り返った。


「怖いんじゃないの?」

「こ、怖くない。それに、セディが『その証を』って脅したんじゃない」


本当は、尻尾を巻いて逃げ出したいくらいだったが、アデルはムキになって美しい緑色の瞳に力を込め、セドリックを睨みつけた。
彼は心外だと言いたげにひょいっと肩を竦める。


「人聞き悪い。僕は別に狩りを強いるつもりはないよ。アデルが最近どっちつかずだから、僕は……」


セドリックもムッとしたように声を低めた。
しかし、何か考えるように言葉を濁す。


「どっちつかずって何よ」


アデルは胸の前で腕組みをしながら、セドリックに言葉の先を促す。
セドリックは地面に視線を落とし、小さく何度か首を横に振った。


「迷いが出てきてるようなら。……いっそ『女の子』になってくれればいいのにって試しただけだよ」

「え……?」


セドリックの淡々とした静かな返事に、アデルは虚を衝かれて思わず黙り込んだ。