碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

セドリックから指摘されて初めて、自分の矛盾に気付いた。
アデルの顔は更に火照って真っ赤になり、頭のてっぺんから湯気が立つように思えたほどだ。


そんな彼女に、セドリックは横に流した視線を伏せ、「アデル」と何か思案するような声で呼びかけてきた。
それを聞いても、アデルは到底顔を真っすぐ向けられない。


「それでもまだ、王国軍騎士になりたい?」

「……え?」


突然心の奥底を覗くような一言を向けられ、アデルは戸惑いながら聞き返した。
セドリックは、彼女のエメラルド色の瞳が困惑に揺れるのを見つめる。


「騎士として叙勲を受けるつもりなら、僕は君をレディとしては扱えない。騎士として、平等に評価しないと」


そう言いながら、セドリックはアデルの瞳を正面から見据えた。
アデルの戸惑いはわかりやすく広がっていく。


「セディ、何が言いたいの?」


セドリックが何を匂わせているのかわからず、アデルは眉をひそめて首を傾げながら訊ね返した。
そんな彼女の前でセドリックは俯き、足元の土を軽く蹴り上げる。


「君の決意が固いのなら、その証を。……来週の満月の夜。夜明けと共に王家恒例の鹿狩りに出かける。君は、僕のお供についてほしい」

「っ……」