碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

そのまま腕を振り上げるのを見て、セドリックは「悪い悪い」と言いながら彼女を軽く手で制する。


「いや、だってさ。最近アデル、矛盾したこと言うな、って」

「何よ?」


刺々しく短い声で聞き返すと、セドリックはふふっと声に出して笑う。


「『アデルは女なんだから』って言われるの、前はあんなに嫌がってたのに。最近の君は、僕の前で『レディに対して』って言葉、使うようになった。アデルは僕に、レディとして扱って欲しいの?」

「……っ!」


からかい交じりの、どこか弾んだ声で探るセドリックに、アデルはギョッとして声を詰まらせた。


「この間も、君の口から聞いた。『レディの部屋に』って。アデル、それならこれからは、僕は思う存分君を女性と思って接していいのかな?」


頭上に広がる澄んだ青空よりも、深く高貴に輝く蒼い瞳を細め、セドリックは口角を上げてアデルの反応を窺ってくる。


途端にアデルの胸は、更にドッキンと大きく音を立てて跳ね上がり、彼女は慌ててその場に立ち上がった。
衣服の誇りをパンパンと叩きながら、彼女の頭の中は大混乱していた。


(確かにそうだ。私、セディに『レディに』なんて言った。……何を考えてるの、私!?)