碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

セドリックが小さな呻き声を漏らしながら、アデルの後頭部に手を回す。
その手が、彼女の頭をポンポンと軽く叩いた。


「アデル、大丈夫?」

「っ……!!」


アデルは、倒れ込む際に巻き添えにしたセドリックを、完全に下敷きにしていたのだ。
その結果、二人は青空の下の誰もいない訓練場で、縺れ合ったまま地面に転がっている。


(わ、私ったら、なんてことを……!!)


今の自分の状況がいやに鮮明に頭の中で浮かび上がり、アデルは一瞬呼吸もできないまま固まった。


「アデル?」


自分の上で彼女が凍りついているのに気付いたセドリックが、訝しげに名を呼ぶ。
そして小さくクスリと笑うと、アデルの乱れたプラチナブロンドの髪をサラッと指に通しながら、セドリックはどこか意地悪な調子で囁いた。


「……アデル。怪我がないなら、そろそろ僕の上から退いてくれないか。……重い」

「っ……ご、ごめんっ……」


耳元に聞こえるからかっているような声で我に返ったアデルは、慌ててセドリックの上から飛び退く。
セドリックの傍らで膝を畳んでぺたんと座ると、彼は『よっ』と掛け声をかけながら上体を起こした。
そして、隣で真っ赤な顔をして首を縮めているアデルを見て、ふっと息をついて笑いかけた。