碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

「今の君には、負ける気がしないからかな」


その言葉は、アデルの胸には蔑みのように届いた。
グッと唇を噛んだ時には、既に身体の方が先に動いていた。


「やあああっ！」


両手で構えた剣を振り上げ、そのままセドリックに踏み込んでいく。
セドリックはアデルの剣筋を涼やかな蒼い瞳で見極め、簡単に阻んだ。


「くっ……」


キーンという音が響くと同時に一歩退き、アデルはセドリックとの間合いを取る。
アデルの腕には痺れが広がるのに、セドリックの表情にはほんの些細な変化も表れない。


「ほら、おいで、アデル。君の力はそんなもんじゃないだろう？」


どこまでも余裕なセドリックに、アデルの心は逆撫でされる。
ギリッと奥歯を噛み締めると、構えも不十分なまま再び剣を振り上げた。


セドリックはわずかに眉間に皺を刻むだけで、アデルの攻撃を物ともしない。
だからアデルは更にがむしゃらに剣を振るしかない。


激しく鋭い剣の音が、他に誰もいない訓練場に響き渡る。
至近距離で二人が弾き合う刀身から、火花が散る。


セドリックは蒼い瞳を鋭く細め、交わる互いの刀身越しにアデルの瞳を観察する。
彼の視界に映るその輝きは、誰が見てもアデルらしくないものだった。