碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

訓練場の真ん中に移動し、剣を構えたセドリックに、アデルは声を上擦らせながら叫んだ。


「さ、さあ! どっからでもかかってきなさい!!」


それを聞いて、セドリックは苦笑を漏らす。


「アデル。何を殺気立ってるんだよ。どうかした?」


軽口を叩くセドリックの前で、アデルは更にムキになる。


「稽古だもの。真剣勝負でしょ」

「まあ、そうだけど。その気勢だけで殺されそうだ」


セドリックにはアデルのこの昂りの意味がわからない。
それでも肩で息をしてから、彼は改めて剣を構えた。


「それなら、アデルの方から、どうぞ」

「え?」

「かかってこいよ。言っとくけど、この間みたいに無様に負けたりしないから」


煽るようなセドリックの言葉に、アデルは口をへの字に曲げる。
剣を構えたまま、ジリジリとセドリックとの距離を詰め、その隙を探った。


「なんでそんな強気なの」


煽りだけではなく、確かに彼の剣構えに隙を見出せない。
アデルはセドリックを上目遣いで見据えながら、足を右に出した。
それを見て、セドリックは逆方向に一歩引く。


「強気……ってわけじゃないけど」


そう言いながら、セドリックはアデルの剣先の揺れを見つめていた。