碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

そのまま、肩を揺らしてクスクスと笑い始める。


「姉上? 何がおかしいの?」


姉がなぜいきなり笑い出したのか、訪れる前の二人の会話を聞いていないセドリックにはまったくわからない。
彼は戸惑いを強めてクレアに顔を向ける。
セドリックの視線を受けたクレアは肩を竦めて、「いいえ」と短く返事をした。


「アデルに稽古つけてもらいに来たんでしょう? アデルもいいって言ってるんだし、済ませてきたら?」


クレアにそう促され、セドリックは狐につままれたような顔をしながらも、うん、と頷いた。
それを見て、クレアはセドリックの腕にしがみついたままのアデルの肩をポンと叩く。


「アデル、セディをよろしく」

「え? あ、はいっ……」


どうやらクレアはセドリックに言いかけた言葉はのみ込んでくれたようだ。
アデルはそれにホッとして、セドリックの腕を離しながら、ぎこちなく笑ってみせた。
クレアはアデルに片目を閉じて合図をする。


「さっき言ってた私の剣のお稽古も、よろしくね」

「はいっ!」


二人から離れていくクレアの背に向かって、アデルは元気に返事をしながら、ようやく安堵の息を漏らす。
そうして肩の力をドッと抜いたアデルを、セドリックは怪訝そうに細めた目で見下ろしていた。