碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

セドリックの方を向きクレアがニヤリと笑うのが、アデルの視界の端に映る。
彼女がセドリックに何を言おうとしているのか、アデルも瞬時にわかってしまった。


「セディ。あなた、アデルの首の……」


クレアが言葉を続けた時、セドリックが二人の前で足を止めた。
彼が、訝しげに『え?』と首を傾げた瞬間。


「セ、セディ!! け、稽古に来たんじゃないの!?」


アデルはひっくり返った声で、クレアを遮った。
そんなアデルに、セドリックはきょとんと目を丸くする。


「うん、そう。でも、なんか訓練場閑散としてるなって思ったら、みんな昼食の時間だね。それなら、後でいい」


セドリックはアデルにそう返事をしながら、続けてクレアの方に目を向ける。


「で? 姉上、アデルの首って……」

「セディ!!」


彼がクレアに話の先を促すのを聞いて、アデルは必死の形相でセドリックの腕にしがみついて止めた。


「え? アデル?」


アデルの行動に、セドリックだけでなくクレアも面食らっている。


「セディ、稽古しよう!」


あまりの焦りで顔を真っ赤にしながら、アデルはセドリックにそう言い募る。


「え? でも。アデルは食事いいの?」


セドリックの方が戸惑った様子を隠せずにいる。
そんな二人を見て、クレアは小さくプッと吹き出した。