碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

色恋沙汰とは無縁のアデルにも、実は『イイ人』がいる……と誤解されてしまうんじゃないだろうか。


(そんなっ……だってこんなの、セディ以外に心当たりなんかないのにっ……!)


「ク、クレア様、すみません! わ、私、行かなければならないところがっ……」


勘違いだと説明しなければ、と焦りながら声をあげて、アデルはハッと我に返った。
説明して、『それじゃあ誰につけられたの?』とでも聞かれたら、なんと誤魔化せばいいのだろう。
それに。


(却って不信に思われて、余計に疑われたりしたら……?)


働き始めた自分の思考に、アデルは焦る。
そもそも、セドリックに何をどう疑われたら困るのか、アデルは自分でもはっきりわかっていなかった。
しかし……。


「あ、アデル! ……あれ? 姉上も」


城に続く回廊から、涼しげな声が聞こえてきた。
振り返らずとも、その声が誰だかよくわかる。
アデルの胸は、ドックンと大きく跳ね上がった。
声の方向に顔を向けたクレアが「あら」と呟く。


「セディじゃないの、ちょうどよかった」

「? 何? 姉上」


クレアに聞き返しながら、セドリックが回廊から逸れて訓練場に入ってくる。