碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

聞き返しながらギョッと目を剥くアデルに、クレアは再び探るような意地悪な目を向けた。


「そうよ。……アデル、あなた誰にこの痕を残されたの?」

「……!!」


クレアのその言葉で、アデルもようやく彼女が言わんとしていることを理解した。
クレアから大きく飛びのき、首筋を手で隠しながら、真っ赤な顔で口をパクパクさせる。
そんなアデルに、クレアは堪え切れないというように、プッと小さく吹き出して笑った。


「心当たりがあるようね~? アデル」

「いっ、いえっ……そんな、私っ……」

「に、しても……。もしセディがこれを本当に虫刺されだなんて思ったとしたら、その方がよっぽど問題だわ。王太子としての教育で、もちろん知ってるはずだけど……執事にちゃんと言っておかないと」

「!!」


眉を寄せて溜め息をつくクレアに、アデルの頭の中は一瞬真っ白になり、何も考えられなくなった。
しかし、鼓動の方が先に働きを再開して、アデルの胸は急速にドキドキと打ち鳴り始める。


(セディ……! もしかして、本当は虫刺されなんかじゃないって、思ってた……!?)


もしもそうであれば。
クレアが言ったように、『男の所有欲の表れ』だというこの痕を、誰につけられたと思ってるだろう。