見えないとわかっていながら、必死に首を捻って自分で確認しようとした。
不格好になりながら、アデルはクレアに説明を続ける。


「昨夜虫に刺されたみたいで。セディ……セドリック王太子からもお薬もらって塗ってるんですけど……もしかして、酷くなってるのかな……?」


気になり始めると止まらない。
アデルは声を尻すぼみにした。


しかし、クレアは『まあ』と口も目を大きく開いて、あ然とする。


「アデル、それはお薬を塗っても治らないわ。と言うか……セディもセディね。男のくせに。これが何かわからないのかしら」


呆れたようにそう言って、クレアは胸の前で腕組みをした。


「え? クレア様? あの、これって……?」


クレアが何を言おうとしているのか、アデルには皆目わからない。
普通の塗り薬で治らないとは、相当悪い虫に刺されたということなんだろうか。


知っているのなら教えてほしいという一心で、アデルは不安げにクレアを見つめた。
アデルの様子に、クレアははあっと声に出して溜め息をついた。
そして、ふふっと面白そうに目を細める。


「ほんと、アデルって……。こういうこと、な~んにも知らないのねえ」

「こういうことって?」